「半年ごとにItanium(IA64)に関するイベント開催」を明言していたItanium Solutions Alliance(ISA)は、米サンフランシスコと東京で「Itaniumの普及促進を目指して2010年までに9社で100億ドル(1兆1700億円)以上の投資を行う」と発表した。Itaniumは米インテルが製造し、米HP(ヒューレット・パッカード)や富士通、日立製作所、NECなどのサーバー8社に提供しているが、x86デザインを利用したMPUに比べてはるかに普及度が遅れている。

 しかし、このMPUは高性能サーバーに使われ単価が高いため、米IDC調べのサーバー出荷金額は、05年第3四半期に76%も増え、サン・マイクロシステムズのSPARCの58%、IBMのPOWERの33%を占めた。特にItaniumサーバーの28%を占める日本は普及度が高く、07年までにRISCサーバー市場の5割をIA64サーバーが奪うと気炎をはいている。

 サンフランシスコでの会議には、日本から富士通の伊東千秋専務、NECの小林一彦取締役が参加。インテルやHPなど各社首脳を交え「対IBM戦略」が討議された。IBMメインフレームをいかにIA64サーバーで駆逐していくかということである。IBMのzSystemの出荷は、米メリルリンチによると、04年の37億8600万ドルをピークに07年まで年率4%で下降する。ガートナーの予測では、06年にIA64サーバーの出荷金額は39億4800万ドルとなり、メリルリンチの予測33億9800万ドルのzSystemを逆転する見通しだ。

 NECは米ユニシスのメインフレーム後継機としてItanium搭載サーバーをOEM(相手先ブランドによる生産)供給することを発表。富士通はItanium搭載のPRIMEQUESTをIBMに次ぐ世界第2位のサービスベンダーである米EDSに提供することで合意した。同社はEDSだけでなく、大手SI/アウトソーシングベンダー数社との間でもPRIMEQUEST販売で交渉している。

 「米サービスベンダーの感触はいい。メインフレーム市場をほぼ独占するIBMが、強硬な態度をとり続けているため、各社はzSystemの代替となり得る高い性能と信頼性、価格性能比を備えたサーバーを欲しているからだ」。富士通サーバー部門の幹部はそのように話す。そしてEDSとの間では「09年にIBMに悲鳴を上げさせるという戦略で一致している」(富士通幹部)。

 サービス各社は、特に顧客が所有するzSystemを含めたITアウトソーシングでIBMから煮え湯を飲まされている。zSystemのレベルアップ時に非常に高いハードやソフトの価格を突き付けられ、飲まざるを得ないからだ。IBMはアウトソーシングの場合、原価でzSystemを組み込む有利な状況にある。従って各サービスベンダーは価格が安く、かつ性能・信頼面で競合可能なマシンを喉から手が出るほど欲しがっている。

 PRIMEQUESTは米マスコミで「zキラー」と評価され始めたハイエンドLinux&Windowsサーバー。EDSはマイクロソフト、ユニシスと協業を組んでいたが、サーバーハードを富士通のPRIMEQUESTに切り替えた。最近では米GMから今後5年間で150億ドルのアウトソーシング契約の約半分を受注しており、サーバー統合でPRIMEQUESTが使われる公算は大きい。また富士通は、トヨタ自動車からもIBMリプレースで約1500億円にのぼるPRIMEQUESTを含めた受注を勝ち取った。

 もう1つの援軍は“IBM互換機”だ。米アムダールにいた技術者が興した米PSI(プラットフォーム・ソリューションズ社)が、Itaniumサーバーの上にzOSを搭載したzSystem互換サーバーを完成し、米国で販売を始めた。PRIMEQUESTもそれは可能。だが富士通とEDSの戦略は、互換ビジネスはPSIに任せ、IBMメインフレームを抹殺するOSやミドルウエアも含めた完全リプレースを狙う。なぜ09年か。Itaniumの次期Monteciteが登場する今年夏からIBMのzSystemに攻勢をかけ、次のTukiwila、さらに次のPaulsonと続けば、09年末までには多大なダメージを与えると見込むからだ。